ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスの発表した「エビングハウスの忘却曲線」は、英語学習者にとって、ものすごく重要な記憶の仕組みと復習のタイミングを教えてくれます。
今回は、
- エビングハウスの忘却曲線とはそもそも何か
- どのように応用するのか
- 具体的に利用するためには
という点を簡単に説明します。
エビングハウスの忘却曲線とは
エビングハウスの忘却曲線とは、意味を持たないものを暗記した際に、忘れること(特に長期記憶)と時間との関係性を科学的に示した曲線です。
上のグラフの緑色の線が、エビングハウスの忘却曲線を表しています。
まずは簡単に概要をつかむために、2つのポイントを知っておきましょう。(エビングハウスの忘却曲線について詳しく知りたい方はMemory: A Contribution to Experimental Psychology Hermann Ebbinghaus (1885)がすごく参考になります。)
エビングハウスの忘却曲線のポイントを簡単にいうと、
- 初日に覚えたことは、翌日に復習すると半分程度の時間で再び覚えることができる
- 1ヵ月復習しなければ、初日に要した時間の97~98%とほぼ同じ時間の復習時間が必要
というところがポイントになります。
これは、学習者にとって意味のないもの、(たとえば、英単語を英単語帳の順番に英語のつづりと日本語で意味を覚えていくようなこと)をした場合です。
「忘れること」には、良い側面もあるため、そのこと自体は受け入れることが大切です。
しかし、無意味なことでも覚えたいものはあります。いつか役に立つと思うからです。
次に、この「忘れること」のメカニズムを応用して、いかに効率的に復習すべきかを示したカナダはオンタリオ州のウォータールー大学の情報を参考に復習ポイントをまとめたグラフを紹介します。
忘却曲線を応用した復習のタイミング
上のグラフの緑線は、先ほど説明したエビングハウスの忘却曲線です。
赤線は、復習ポイントを意味しています。
つまり、
初日に学習して覚えた状態を100%とすると、
その翌日に10分間復習すると、初日の記憶の100%の状態に、ほぼ近づきます。
そして、初日から1週間経った後に再度学習する場合、半分の5分間の復習でほぼ100%に戻るのです。
さらに、初日から1ヵ月後に再度復習をする場合、その時間はさらに短くてよくなり、2分~4分となります。
それ以降は、忘却が緩やかになります。
復習のタイミング1
- 翌日に10分
- 1週間後に5分
- 1ヵ月後に2分~4分
この忘却曲線と復習のタイミングには、諸説あります。
そのため、もう一つだけ、別の復習タイミングを示している情報を紹介します。
アメリカはケント州立大学の情報です。
もう一つの復習タイミング
Now is the perfect time to start final exam study! Start your review now! Fight the forgetting curve and avoid sleepless cramming sessions! pic.twitter.com/6A5cDa2H64
— Academic Success Ctr (@KentState_ASC) 2018年4月16日
ケント州立大学の情報によると、4週間毎週復習することで、忘却曲線が緩やかになることを示しています。
青色がエビングハウスの忘却曲線です。
復習を1回もしない場合、ほぼ同じ学習時間が必要
初日学習したことを75%とすると、1回も復習しない場合、4週間後に復習して再び覚えなおすのにほぼ同じ学習時間が必要となることは、上記の説明と同じです。
翌週しか復習しなかった場合も、ほぼ同じ学習時間が必要
1週間後に復習することで、初日より理解が深まります。その時点を100%とすると、それ以降に復習をしなかった場合、5週間後には1回も復習をしなかった場合と数%しか復習に必要な時間がかわらないという結果になります。
要するに、学習して1週間後に1回復習しただけでは、記憶が定着せずにすぐに忘れてしまうということです。
1週間置きに2回復習した場合、ほぼ半分の学習時間でOK
次に、初日学習から1週間後と2週間後と2回の復習をした場合、1回しか復習しなかった場合と比べて5週間後の復習時間は約50~60%と時間節約できることを示しています。
1週間置きに3回復習した場合、約4割の学習時間でOK
そして初日学習から1週間後、2週間後、3週間後と3回の復習をした場合、1回しか復習しなかった場合と比べて5週間後の復習時間は約60~70%と時間節約できることを示しています。
1ヵ月間毎週復習した場合、初回学習の110%記憶が定着する
最後に、初日学習から4週間毎週復習を行った場合、初回学習よりも記憶が定着した状態で5週間目以降も記憶がほぼ定着します。そして、忘却曲線も非常に緩やかになります。
まとめると
- 1週間後に1回復習しただけではあまり意味がない
- 1週間後、2週間後の2回復習すると、50~60%時間節約できる
- 1週間後、2週間後、3週間後の3回復習すると、60~70%時間節約できる
- 4週間毎週復習すると、記憶がほぼ定着し、忘却が緩やかになる
復習のポイント2
4週間は毎週復習すること
まとめ
カナダのウォータールー大学とアメリカのケント州立大学の情報から復習ポイントを2つ紹介しました。
記憶定着の復習のタイミングには、諸説ありますが、以下の通り実践すれば、記憶を安定させ、忘れることを非常に緩やかにすることができます。
- 翌日に10分
- 1週間後に5分
- 2週間後に5分
- 3週間後に5分
- 4週間後に4分
なお、これは洋画や海外ドラマで英語学習する際の目安となります。
受験勉強や資格取得の勉強ほどの学習量であれば、復習時間は1回30分~1時間はかかります。
大切なことは、知識を手に入れたら、実践することです。
学習スケジュールに取り入れてみましょう。
行動・実践することで、自分自身の身になってくれます。